五葉松ミニ盆栽が「枯れた?」…盆栽の郷で聞いた復活術
Share
夏のあいだ、朝と夕方の1日2回。
雨の日も風の日も、五葉松のミニ盆栽への水やりだけは皆勤賞でした。
それなのに秋風が吹くころ、枝の奥が茶色に……。
「まさか、枯れた?」と、心臓がきゅっとなりました。
同じ不安を抱えている方も、いらっしゃるかもしれませんね。
ここでは、高松盆栽の郷のスタッフの方に直接うかがった、茶色くなった五葉松の見分け方と、今日からできる復活術をお届けします。
皆勤賞の水やりなのに、五葉松ミニ盆栽が茶色に

わが家の五葉松は、手のひらにのるくらいのミニ盆栽です。
「ミニ盆栽は土が少ないから、夏はすぐに乾く」と聞いていたので、真夏は特に気をつけていました。
「乾かしたら枯れてしまう」と心配で、朝と夕方の1日2回、欠かさずお水をあげてきたんです。
毎日お水をあげていると、ふしぎなもので、だんだん愛着がわいてきます。
出かける前や帰ってきたとき、気づけば「この子は大丈夫かな?」と鉢をのぞいている自分がいました。
ところが10月に入って、いつものようにのぞきこむと、写真のように枝の奥のほうに茶色い葉がたくさん。
先のほうは緑なのに、内側だけが赤茶色に変わっていました。
「えー、そんな……」
思わず声が出ました。
かわいいわが子が急に元気をなくしたときのような、胸がざわざわする不安です。
「水が足りなかったの? それとも、あげすぎ?」
考えれば考えるほど分からなくなり、自分ひとりで判断するのはやめにしました。
こういうときは、プロに聞くのがいちばんの近道です。
五葉松のふるさと「高松盆栽の郷」へ相談に

向かったのは、高松市国分寺町にある「高松盆栽の郷」です。
高松市の鬼無(きなし)・国分寺地区は、松盆栽の全国シェア約8割をほこる、日本一の松盆栽の産地。
約60軒の生産者さんが、黒松や五葉松、錦松などを育てています。
高松盆栽の郷は、その魅力を国内外に伝える拠点として、2020年にオープンしました。
棚場※には常時約1万鉢の盆栽が並び、プロの盆栽作家さんも常駐して、さまざまな相談にのってくださいます。
※棚場(たなば):盆栽を並べて育てるための棚のこと
今回は、わが家の五葉松を鉢ごと連れて行き、スタッフの方に実物を見ていただきながら、これからの手入れについてうかがいました。
「枯れてしまったのでは」と半分あきらめかけていたわたしに、スタッフの方が教えてくださったのは、とても具体的で、今日からすぐに始められることばかりでした。
茶色い葉は「枯れた」とは限らない
お話をうかがったあと、家に帰ってから調べてみると、ちょっとホッとすることが分かりました。
松の仲間は秋になると、枝の内側にある古葉※が茶色くなって落ちる性質があるのです。
葉っぱの衣替えのような、自然なサイクルなんですね。
※古葉(ふるは):前の年以前に出た古い葉のこと
一方で、枝の先のほうから茶色くなっている場合は、病気や害虫、乾燥などで木が弱っているサインのことがあります。
見分けるポイントは「どこが茶色いか?」

-
枝の内側(幹に近い側)が茶色:秋の自然な葉の入れ替わりのことが多い
-
枝の先端から茶色:病気や害虫、乾燥などで木が弱っているサインのことがある
うちの五葉松は先端の葉が元気な緑色でした。「全部が枯れたわけではなさそう」と分かって、肩の力が抜けました。
それでも、反省すべき点が2つありました
ひとつ目は、鉢の大きさです。
スタッフの方に言われてハッとしたのが、「この大きさの木なら、鉢はもっと小さいものにしておくべきだった」というひと言でした。
「ミニ盆栽は土が少ないから乾きやすい」と思いこんでいましたが、木の大きさに対して鉢が大きければ、そのぶん土も多くなります。
土が多いと水が残りやすく、そこへ1日2回の水やりが重なって、根にとっては湿りすぎだったのかもしれません。
木と鉢の大きさのバランスまでは、まったく気にしていませんでした。
ふたつ目は、水やりのしかたです。
実は、夏の朝夕2回という回数そのものは、盆栽の解説書などでもよく紹介されている目安です。
ただ、わたしは「回数を守ること」ばかり気にして、土の乾き具合をきちんと見ていませんでした。
春に小さな鉢へ植え替えれば、土の量も乾き方も変わります。
これからは回数だけに頼らず、土や葉の様子をよく見て、あげるときは鉢底から流れ出るまでたっぷりあげるつもりです。
そう考えると、水やりの時間は「この子の今日の様子を知る時間」にもなりそうです。
盆栽の郷で教わった、五葉松の復活術

スタッフの方に教わった手入れを、時期ごとに整理しました。
いただいた資料の松の年間スケジュールとも照らし合わせています。
今すぐやること(10月)
まずは枯れ葉取りから。
すでに茶色くなった枯れ葉を、指やピンセットでやさしく取りのぞきます。
風通しがよくなり、カビや虫の予防にもなります。
置き場所は、太陽の光をたっぷり浴びられる場所へ。
秋の日差しは、木が冬を越すための体力づくりに欠かせません。
ここで大事なのが、今からの時期は「軒下に置かない」こと。
軒下は雨よけにはなりますが、秋は日が低くなるぶん、日陰になりやすい場所です。
あわせて、冬に向けて栄養をたくわえさせるために肥料をあげます。
また、スタッフの方に教わったのは、鉢の四すみに油かす※を置く方法です。
幹や根元のすぐそばではなく、鉢のふちに近い四すみに置くのがポイントです。
水やりのたびに少しずつ溶け出して、ゆっくりと根に届きます。
※油かす:菜種などから油をしぼったあとのかすで作る、植物由来の肥料のこと


気温が下がってきたら
寒くなってきたら、古葉取りをします。
今の枯れ葉取りが「枯れた葉のお片づけ」だとすれば、古葉取りは「冬を迎える前の葉の整理」。
まだ緑が残っている古い葉も取って、春に出てくる新芽に日の光が届くように整えます。
ただ、どこまで葉を取るかは、木の状態によって変わります。
この子はまだ回復の途中なので、作業の前にもう一度、盆栽の郷で相談してから行うつもりです。
春(3月上旬〜4月下旬)
植え替えは春に行います。
資料によると、適期は3月上旬から4月下旬、五葉松の植え替えは4〜5年に1回が目安です。
弱っている今はあわてて鉢を替えず、春までは今の鉢のまま様子を見ます。
植え替えのときは、スタッフの方のアドバイスどおり、木の大きさに合った小さめの鉢に替えます。
根のまわりの余分な土が減るので、水が残りすぎるのを防ぐことにもつながります。
植え替えたら、針金で木を鉢に固定する根留め※をします。
根がしっかり張るまでの半年から1年ほど、固定しておきます。
ただし、針金が幹や根元に食い込み始めたら、期間に関係なくすぐに外してください。
※根留め(ねどめ):植え替えのとき、鉢底の穴に針金を通して木がぐらつかないように留めること
五葉松ミニ盆栽 秋から春の手入れカレンダー
| 時期 | やること |
|---|---|
| 今(10月) | 枯れ葉取り、日当たりのよい場所に置く(軒下は避ける)、鉢の四すみに油かすを置く |
| 気温が下がったら | 古葉取り(作業の前に、お店で相談してから) |
| 12月〜2月 | 肥料はお休み(施肥は10月まで)。冬の管理は、盆栽の郷で聞いてから改めてご紹介します |
| 3月上旬〜4月下旬 | 木の大きさに合った小さめの鉢に植え替え、針金で木を鉢に固定する |
| 固定している間 | 針金の食い込みをときどき確認し、食い込み始めたらすぐ外す |
| 半年〜1年後 | 根が張ったら針金を外す |
この記事に出てきた盆栽用語のミニ解説
はじめての方がつまずきやすい言葉を、やさしく言いかえてみました。
-
五葉松(ごようまつ):葉が5本ずつ束になって生える松です。成長がゆっくりで、小さな姿を保ちやすいので、盆栽で人気があります。
-
ミニ盆栽:手のひらにのるくらいの小さな盆栽のことです。かわいらしい反面、育て方には小さいなりのコツがあります。
-
棚場(たなば):盆栽をずらりと並べて育てる棚のことです。盆栽の「お部屋」のような場所ですね。
-
枯れ葉取り(かれはとり):すでに枯れた葉を取る、日ごろの手入れです。
-
古葉取り(ふるはとり):寒くなるころ、まだ緑が残る古い葉も含めて整理する、松の季節の手入れです。
-
油かす:菜種などから油をしぼったあとのかすで作る、植物由来の肥料です。鉢の土の上に置いておくと、水やりのたびに少しずつ溶けて、ゆっくり効いていきます。
-
植え替え:鉢から木を出して、新しい土や鉢に植え直すことです。根が詰まるのを防いだり、木に合った鉢に替えたりして、木を元気に保つために行います。
-
根留め(ねどめ):植え替えのとき、鉢底の穴に通した針金で、木を鉢にしっかり留めることです。新しい根が育つまで、木がぐらつかないように支える「シートベルト」のような役目をします。
-
鉢底穴(はちぞこあな):鉢の底にあいている穴です。余分な水を外に出す、大切な出口です。
まとめ
皆勤賞の水やりに、大きすぎたお家。
どうやらわたしの五葉松は、「愛が重すぎた」うえに「部屋が広すぎた」ようです。
ごめんね。
盆栽は言葉で語りかけてはくれませんし、大きさもすぐには変わりません。
それでも毎日向き合っていると、葉の色や土の乾き方に、小さな変化があることに気づきます。
今回の茶色い葉も、この子なりのサインだったのかもしれません。
五葉松のミニ盆栽が茶色くなっても、すぐに「枯れた」とあきらめなくて大丈夫です。
まずは、茶色いのが枝の内側か先端かを見てみてください。
盆栽にふれてみたい方へ
自分の盆栽の状態を、実物を見ながら相談できる場所があると心強いですよね。
わたしがよくお邪魔しているのが、地元・香川の「高松盆栽の郷」です。
プロの盆栽作家さんが常駐していて、さまざまな相談にのってくださいます。
今回のように「枯れたかも」と不安になったときも、産地のプロに直接見てもらえるのは、本やネットにはない安心感があります。
肥料や道具もそろうので、教わったその日から手入れを始められます。
見学だけでも大歓迎とのことですので、ぜひ一度のぞいてみてくださいね。
高松盆栽の郷
住所:〒769-0102 香川県高松市国分寺町国分353-1
TEL:087-874-2795
営業時間:9:30〜17:00(年始を除き無休)
施設案内:https://takamatsu-bonsai.com/store/help/about
JA香川県 店舗情報:https://www.kw-ja.or.jp/shop/shop-24712/
※営業時間・店休日は変更される場合があります。お出かけ前に公式情報をご確認ください。
参考情報
高松盆栽の郷でいただいた資料(年間の世話と作業スケジュール、産地紹介)
西東社『小林國雄のイチから教える盆栽』
農林水産省 中国四国農政局『花き日記第4回 盆栽(香川県)』:https://www.maff.go.jp/chushi/seisan/flower/attach/pdf/hana_diary-4.pdf
All About『盆栽の水やりの基本』(山田香織):https://allabout.co.jp/gm/gc/417749/
コロラド州森林局『Needle drop』:https://csfs.colostate.edu/wp-content/uploads/2015/09/FINAL-NR-Needle-drop-WP-Sept2015.pdf
※手入れの時期や水やりの回数は、樹の状態・鉢の大きさ・地域の気候によって変わります。本記事は、筆者の五葉松について高松盆栽の郷でうかがった内容をもとに、いただいた資料や盆栽の書籍を参考にしてまとめています。